前回、岩手の建設業111社を診断した結果を書きました。資本金5,000万円以上の会社は27.3%がスマホ非対応、2,000万円未満の会社は11.3%。大きい会社のほうが2倍以上、スマホで見られない状態でした。
今回はその理由です。
「作った年」で全部説明がつく
サイトの最終更新年を拾ってみると、構図がはっきりします。
診断できた111社のうち、今年(2026年)中に更新されているのは73社。全体の3分の2です。残りが2025年に7社、2024年に7社、2023年以前が9社。最も古いものは2019年でした。
ここで大事なのは、更新が止まっている会社の多くが、サイト自体は早い時期に作っているということです。
早く作った。だから当時の技術で作られている。そして更新されていないから、当時のまま残っている。
それだけの話です。
2005年の正解が、2026年の不正解になる
2000年代半ばにホームページを作った会社を想像してください。
当時、iPhoneはまだ日本で売られていません。サイトを見る人は全員パソコンです。画面は横長で、解像度は決まっている。だから横幅800pxや1000pxで固定して作ります。テーブルタグでレイアウトを組みます。それが当時の標準的な作り方でした。
これは手抜きではありません。その時点での正解です。
2010年前後からスマホが普及します。サイトの作り方が変わります。画面幅に合わせて伸縮する作りが標準になります。
このとき、既にサイトを持っている会社には、作り直す動機がありません。サイトは表示されているし、問い合わせも来ている。壊れていないものを直す理由がない。
一方、この時期に初めてサイトを作った会社は、当然その時点の標準で作ります。何も意識しなくても、スマホ対応のものができあがります。
先行者が固定され、後発者が新しい前提でスタートする。 この2つがすれ違ったまま、10年以上が経ちました。
なぜ社内から声が上がらないのか
古いサイトが放置される理由は、技術ではなく組織の側にあります。
理由1:社内の人間は自社サイトを見ない
毎日サイトを開く社員はいません。見るのは外部の人だけです。だから社内で誰も違和感を持ちません。
理由2:困っている人が社内にいない
見づらいと感じているのは、求職者や新規の取引先です。その人たちの声は社内に届きません。「見づらかったので他社にしました」とわざわざ連絡してくる人はいません。
理由3:言い出した人が担当になる
これがいちばん大きいと思っています。「うちのサイト、古くないですか」と言った人が、そのまま担当を押し付けられる。制作会社の選定、原稿の用意、社内調整。本業を抱えたまま片手間でやる仕事としては重い。
だから誰も言い出しません。困っていないので、言わないほうが合理的です。
この3つが揃うと、会社の規模が大きいほど放置されやすくなります。 小さい会社なら社長が一人で決められますが、規模が大きいほど言い出しにくく、決裁も通しにくい。
診断結果で資本金の大きい会社ほどスマホ非対応が多かったのは、この構造の反映だと考えています。
「困っていない」は正しいのか
ここが分かれ目です。
サイトが古くても、既存の取引先との仕事は回ります。長い付き合いの元請けが、サイトを見て発注先を変えることはありません。だから売上には出ません。
出るのは採用です。
応募を考えている人は、必ず会社名で検索します。そこで出てきたサイトが、スマホで文字が読めない状態だったとします。応募する側は「古い会社なんだな」と判断します。それ以上でも以下でもありません。
そして、この判断は会社に伝わりません。応募しなかった人は、何も言わずに去ります。
「困っていない」のではなく、「困っていることに気づけない」構造になっています。
直すのは、たぶん思っているより簡単
前回も書きましたが、スマホ非対応と判定された21社の多くは、作り直しが必要な状態ではありません。
HTMLの1行が入っていないだけ、というケースが相当数あります。この話は次々回に詳しく書きます。
いま古いサイトを持っている会社は、判断が遅かったわけではありません。むしろ早かった会社です。 早く手を打った結果として、いま古い。
その順番だけ、押さえておいてもらえればと思います。
この調査について
岩手県の建設業許可業者名簿(令和8年6月30日時点)の全3,994社から法人2,045社を抽出し、ホームページを特定できた111社を機械的に診断しました。111社は法人全体の一部であり、岩手の建設業全体を代表する数字ではありません。